セミナー

*所属はすべて講演当時のものです.
基本的に関係者のみの開催ですが,参加をご希望の方は奥野 (okuno@ism.ac.jp) までご連絡ください.

特異モデルに対する情報幾何学の建設に向けて
中島直道 (芝浦工業大学)
2025年8月25日15:00-16:00
統計数理研究所
科研費セミナー (25K03087)

甘利・長岡により導入されたリーマン多様体上の双対平坦構造は情報幾何学における主要な空間概念であり,この微分幾何学的枠組みを通じて情報幾何学は統計科学や情報科学,最適化問題等の理論へ統一的な幾何学的解釈を提供する.しかしながら,深層学習に代表される特異統計モデルではリーマン計量が退化し,このような空間には微分幾何的な手法が適用できない.講演者はそのような空間に対しても情報幾何的な手法が有効となる理論の構築を目指しており,これまでには特異点理論の立場から双対平坦構造の一般化を行い具体例への適用を模索してきた.現状は理論的な結果にとどまっておりまだまだ道半ばではあるが,本講演では,様々な議論のタネになるよう我々の数学的理論のアイデアやエッセンスに焦点を当てた紹介や,応用上重要そうな事例の共有をしたい<.
条件付き確率分布の単峰性に着目した順序回帰研究
山﨑遼也 (一橋大学)
2025年7月15日13:30-14:30
統計数理研究所
科研費セミナー (25K03087)

順序回帰では,背後にある離散目的変数が"自然な順序関係"を持つ(例えば,賛成,中立,反対)ようなデータ(順序データ)に対する予測問題を検討する.本発表では,順序データの自然な順序関係の特徴づけとして"条件付き確率分布の単峰性"に着目する順序回帰研究の2つのアプローチについてお話しする:一つは尤度モデルを単峰または単峰に近くなるように制約するアプローチで,もう一つは単峰な尤度が得られやすくなるように学習法を工夫するアプローチ.
任意の停留点が大域的最小解になる関数:invex関数と擬凸関数
西岡暁 (東京科学大学)
2025年6月6日14:00-15:00
統計数理研究所
科研費セミナー (25K03087)

[概要] 本講演では、任意の停留点が大域的最小解になる関数のクラスであるinvex関数と、そのサブクラスである擬凸(pseudoconvex)関数について解説する。上記の性質は勾配法などの単純な最適化アルゴリズムで大域解が得られることを意味する。講演者が専門とするトポロジー最適化への応用や、他分野における応用研究の文献なども合わせて紹介する。
Learning to Do Computational Algebra via Transformer
計良宥志 (千葉大学)
2024年8月29日13:30-15:00
統計数理研究所
統計思考院セミナー

[概要] Computational algebra has developed various algorithms for processing polynomials, including polynomial system solving, or more generally, Grobner basis computation of an associated ideal. In this talk, I present a new paradigm for addressing such problems, i.e., a machine-learning approach using a Transformer. The learning approach does not require an explicit algorithm design and can return the solutions in (roughly) constant time. This approach does not necessarily return correct solutions but can be a practical compromise against large-scale problems for which math algorithms run into a timeout. I’ll show several successful cases and challenges particular to this approach.
再生核Hilbert空間上のKoopman作用素のデータ駆動的推定における新しい理論基盤とその応用について
石川勲 (愛媛大学)
2024年3月21日10:30-11:30
統計数理研究所
統計思考院セミナー

[概要] Koopman作用素とは引き戻しという操作によって力学系を関数空間上の線形作用素として実現したものであり、近年では動的モード分解(DMD)と呼ばれる時系列解析の手法との繋がりで発展してきている。本講演では再生核Hilbert空間上のKoopman作用素に注目し、最近考案した新しいDMDの手法の理論基盤(arXiv: 2403.02524)とその応用について紹介する。DMDは力学系が生成するデータからKoopman作用素を近似する行列を推定する手法と言えるが、再生核Hilbert空間に内在する構造をうまく使って既存手法を修正・拡張することで、得られた近似行列やその固有値、固有ベクトルの数学的な解釈や収束を厳密に示されることを説明したい。また、力学系の生成する有限個のデータから元の力学系を復元する方法やその理論保証についても紹介する。